兵庫県伊丹市に位置する「天壽庵 鳳凰院(てんじゅあん ほうおういん)」は、地域の葬儀や法要を執り行う 浄土真宗本願寺派の寺院・式場構造を持つ施設です。
天壽庵 鳳凰院は、兵庫県伊丹市伊丹4丁目に所在します。伊丹市は大阪府に隣接し、大阪国際空港(伊丹空港)を擁する都市として知られていますが、古くは伊丹郷町と呼ばれる酒造りの町として栄え、歴史的な風情を残すエリアでもあります。鳳凰院を初めて訪れる人が最も驚くのが、その近代的な外観と、一歩足を踏み入れた瞬間に広がる荘厳な空間とのギャップです。近年の都市部に見られる「ビル型寺院」の形態をとっており、外側から見ると現代的なコンクリート調のスタイリッシュな近代ビルです。しかし、中に入るとそこには伝統的かつ異国情緒を漂わせる仏教の世界が広がっています。この「一見お寺には見えないが、内部は深く洗練された祈りの空間」という構造は、限られた都市の敷地を有効に活用しつつ、現代人が気負わずに集まれる場所を作るための現代建築デザインの工夫と言えます。
見返り阿弥陀

天壽庵 鳳凰院の最大の特徴であり、訪問者が息をのむポイントは、堂内に配置された仏像や美術品の多様性と、その背景にある独自のストーリーです。
見返り阿弥陀のやさしいまなざし
本堂の中心でお迎えしてくれるのは、素晴らしい阿弥陀仏(阿弥陀如来)像です。この阿弥陀様は、後方をふっと振り返ろうとしているかのような、優しく人間味あふれるまなざしをしています。「みかえり阿弥陀」の系譜を想起させる意匠です。仏教において「振り返る阿弥陀」は、正しく生きようとしながらも迷い、遅れてついてくる人々を「まだか、まだか」と心配して振り返り、待ってくれている慈悲の姿を表しているとされます。鳳凰院を訪れる参拝者や、大切な人を亡くして悲しみに暮れる遺族の心を、この温かいまなざしが静かに癒やしています。
釈迦苦行僧像: お釈迦様が悟りを開く前、極限の断食や修行によって骨と皮だけになった姿を写実的に捉えた像です。日本の一般的なお寺ではあまり見かけない、南伝(上座部)仏教やガンダーラ美術の流れを汲むような、リアリズムに満ちた像が安置されています。

納骨堂と「鳳凰図」
施設内には、現代のニーズに合わせた納骨堂も併設されています。この納骨堂の象徴となっているのが、鳳凰院の名称にもぴったりな「鳳凰図」の展示です。鳳凰は、古来より徳の高い君主が誕生した際に現れるとされる瑞獣(神聖な生き物)であり、仏教においても極楽浄土に舞うおめでたい鳥とされています。洗練された現代のアートワークが散りばめられた納骨堂は、暗く冷たいイメージを払拭し、故人が安らかに眠り、遺族が明るい気持ちでお参りできる空間として機能しています。
納骨壇については受付中でございます。
寺川住職の理念と現代日本の
仏教への問題提起
天壽庵 鳳凰院を語る上で欠かせないのが、このお寺を守り、活動を先導している寺川住職の存在と、その先進的な思想です。住職は、現在の日本仏教が抱える「形式化」や「生活との乖離」に対して、非常に強い危機感と課題意識を持っています。現代の日本において、お寺は「お葬式の時だけ関わる場所(葬式仏教)」と揶揄されることが多く、一般の人々が生きている間に仏教の教えに触れ、救いを得る機会が減ってしまっているのが現状です。
「私たちが生きているうちに出来ることは何か」
寺川住職は、訪問者や文化人、社会活動家たちと「現代の日本の仏教の危うさ」や「私たちが生きているうちに、この社会に対して何が出来るか」という本質的な課題を日々共有し、対話を重ねています。仏教の本来の役割とは、死者を弔うことだけではなく、「今を生きる人々の苦しみ(四苦八苦)に寄り添い、生きる知恵と心の平穏を与えること」にあります。鳳凰院が、アジアの多様な仏像を並べたり、アート作品を積極的に取り入れたりしているのは、お寺という場所を「過去の伝統に閉じこもる場所」にするのではなく、「現代人が生きる力を得るためのオープンなプラットフォーム」として復活させたいという、強い願いが込められているからです。
アートの力と仏教の融合
住職は、仏教の真の役割を現代社会に復活させるためのアプローチとして、「アート(芸術)の力」の必要性を強く認識しています。 古来、仏教は文字を読めない人々にも教えを伝えるため、仏像、仏画、寺院建築、音楽(声明)など、あらゆる芸術の粋を集めて発展してきました。鳳凰院の中に展示されている「塩澤の鳳凰図」や、アジアの歴史ある仏像群は、言葉による説教を超えて、見る人の心に直接「美」や「畏敬の念」、「安心(あんじん)」を届けるメディアとして機能しています。お寺にアートを融合させることで、単なる葬儀の場を超え、地域の人々が文化に触れ、心を豊かにできる空間を目指しているのです。
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